前略、
「不着」とは文字通り
「郵便物が届かない」事を言う。
書留郵便やエクスパックならば、バーコード入力による配達追跡調査で現在の状況が大概把握できるのだが、記録の残らない普通郵便となると不着の調査には時として膨大な労力と時間を要する事が有り、我々として嫌な案件の最たるものである。
まず不着の要因として考えられる事は…
●誤配達
●誤返送・誤転送
●あて名が不正確または不明瞭・誤記
●貼付されたあて名部分が脱落
●差出人様が出していない
●流通上の問題
●料金不足
●差し出し局から到着局までの間に何らかの事故が起きた
●第三者による郵便物の抜き取り
●配達後の問題などが考えられるだろうか。
《誤配達》恥ずかしい話であるが、誤配達が原因で正当受取人様に郵便が届かないと言う事は実際に有る話です。「郵便が届かない」という申告を受けると、まず配達人に当該郵便を見た記憶が有るかどうかの確認をし、合わせて現場周辺の調査も行う。類似番地や類似氏名宅へ誤配、空き家・空き室・空きポストへの誤配が考えられるからだ。調査の結果、当該郵便物が発見されれば速やかに正当受取人へ謝罪・配達される。当然「誤配」した者には処分が待っている。
《誤返送・誤転送》転居届が出ているにも拘わらず、転居届け・転送期間の見落としや、届け出受理時の転送先入力ミス、転送シールの貼付ミスが原因。この場合は返送・転送先から「間違いではないか?」とのご連絡を頂くので、原因は比較的特定し易い。
《あて名が不正確または不明瞭。誤記》これが意外に多い。郵便番号や地名が不正確だと、配達局まで到着せず、中継局で迷子になってしまったりするのである。到着局まで届いても丁目・番地や号室数の誤記が有ると、区分が出来なかったりする。
地名の頭に北とか新とか南とか上とか付くような類似地名が有る所は書き漏れが非常に多いので要注意。アパート名や会社名も省略せず、ご面倒でも正確に書いていただきたい。氏名も苗字だけしか書かれていないと、同一番地に複数件の同氏名宅が有る場合に配達が困難となる。
昨年暮れ、「先方がクリスマスカードを12月中旬に出したと言っているのに25日になっても届かない」という不着申告が有った。結果は、お孫さんがお婆ちゃんに宛てたカードで、住所が間違っていた為に差出人様へ戻ってしまい、戻っていた事がお孫さんからお婆ちゃんに伝えられていなかった為、受取人のお婆ちゃんから「まだ届かない」とクレームになったのだ。
受取人様から差出人様へ、あて先は正確にお伝え願いたい。また差出人様から受取人様へも、今一度あて名の確認を願いたい。お子様がお出しに成られる様な時は是非、親御さんの方からも誤りが無いかあて先を確認していただきたい。
これらあて名の不備は誤配達の要因にも成りかねないのです。
《貼付されたあて名部分が脱落》これはどういう事かというと、ダイレクトメールなどによく見られるタイプで、「あて名部分」があらかじめシールに印刷され、郵便の表面に貼付されているものが、のり付けが弱かったり、不可抗力によって脱落し、あて名の無い迷子郵便と成ってしまう。
《差出人様が出していない》不着申告で必ずと言って良いほど「先方は出したと言っている」と言われる。しかし、普通郵便の場合、郵便局側での引き受け記録のような物が残らない以上、先方が「出した」と言えば、受け取る側は信じるしかない。実際はこれから出すところでも「出した」と言われてしまえば、明日・明後日には届くだろう…と考える訳でありますが、調査の過程で、差出人様に「何月何日何時頃、どこの郵便局(もしくはポストから)、切手は幾ら分貼付したか、封筒の色、大きさ」等々の確認をすると、矛盾する点が間々出て来る事がある。受取人様からの督促に、拠所無い事情で「出しました」と言ってしまったのだろうか。
《流通上の問題》台風や地震、航空機の欠航・遅延、高速道の交通渋滞、通行止めなどにより輸送便が乱れ、大幅に送達日数に時間がかかり配達局への到着が遅れたときに起こり得る。海外からの郵便の場合は更に戦争・紛争などによる影響を受ける事もある。
《料金不足》料金が不足の場合、郵便は差出人様へ戻ってしまう。この事が受取人様へ伝わらないままだと、差出人様が改めて正規料金で再差し出しするまでのタイムラグが生じて「先方が出したと言っているのに届かない」という誤解が生じてしまう。
《差し出し局から到着局までの間に何らかの事故が起きた》例えば郵袋の出し漏れや自動読み取り区分機に挟まってあて名部分が損傷・汚損してしまった等。ごく稀であるが、街角のポストにタバコなどを投げ入れられ中の郵便物が焼失したという事件も。
《第三者による郵便物の抜き取り》第三者とはあて名の人物以外の者を指し、ストーカーや泥棒、家族や知人の嫌がらせ等。残念だが、職員・非常勤職員による抜き取り犯罪も有る。勿論、懲戒処分が待っている。
数年前の年賀状配達で、「元旦に年賀状が一通も届かない!」という申告が有り、懸命の捜索の結果、実はその家の子供が既に受け取っていて、両親へ届いた分を渡し忘れていた…という案件が有った。
《配達後の問題》屋外の郵便ポストなどで、裏蓋が破損・全開しているような場合、配達後に何らかの不可抗力(チラシや新聞の投函)によって郵便がポスト外へ落下、風に飛ばされ亡失、と言うのが有る。郵便をポストに配達した直後に裏蓋が壊れていたためそのまま落下する事例は多々有った。勿論、拾って再び投函するのだが、投函後の不可抗力による再落下について迄は関与できず。ポストの修理、施錠を願いたい。
また、マンション・アパートで見られるのが、ポスト内に溜まりに溜まった新聞・チラシの山の中に紛れた郵便物に気づかず、チラシ等と一緒に捨ててしまうと言う事。実際、共用のゴミ箱にチラシに紛れて捨てられた郵便物を見た事が有る。故意に捨てたのか否かは判らないが。
以上のように不着に関しては非常に多くの要因が考えられ、記録も残らないため調査が非常に困難である。今日、通信はメールの普及により早い事が当たり前となり、1日でも延着しようものなら「裁判を起こすぞ」と言われてしまう世の中だ。実際、郵便局側にもかなりの落ち度がある。精度がさほど良くない自動読み取り区分機が絡む事故や普通郵便でも民間のメール便のように最低限、バーコード貼付で追跡記録が出来る様なシステム構築をしておかないと競争には勝てませんぞ、当局様。でないと膨大な不着申告は一向に減らせ無いのではないか。 草々
posted by 伝之助(元ラブログ内郵便局長) at 16:42|
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